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『介護ビジョン』8月号に掲載されました。
2020.08.28
MEDIA
(株)日本医療企画発行 介護経営月刊誌『介護ビジョン』8月号に、三郷さくらの杜が掲載されました。
ぜひご覧ください。
掲載記事はこちら。
(以下記事)
ケアのある風景
社会福祉法人 桐和会
特別養護老人ホーム 三郷さくらの杜
“自然”の中の“自然”な暮らし。自ずと生まれる笑顔と優しさ。
東京都に隣接し、郊外化が進んでいるもののまだ各所に緑の景観が残る埼玉県三郷市──。そんな自然の風景の中にたたずむ「三郷さくらの杜」には、自然とともに、自然に過ごす利用者たちの姿があった。
自然に囲まれて生活していると
心も表情も自然とやわらぐ
駐車場の向こうに広がる水田に、青々とした稲の葉が風に揺れている。稲の間を縫うようにゆっくりと泳ぐカモの親子。時々聞こえてくるのは、ユーモラスなウシガエルの声。別の方角に目を移すと、中川から分岐した三郷放水路の土手に、深緑に覆われた桜並木が続いているのが見える。自然豊かなのは敷地の外だけではない。建物と道路に挟まれた芝生の庭につくられた農園には、ナス、ミニトマト、キャベツ、イチゴなどの野菜や果物が植えられている。庭の横にしつらえられたブドウ棚には、まだ青いが、巨峰の実がなっていた。
「今日は何を収穫しようか?」麦わら帽子をかぶった利用者が、スタッフとともに農園に集合した。野菜の育ち具合を見て、立派に育った太いネギを収穫することに決定。スタッフと一緒に土からネギを引き抜く人もいれば、ホースで水やりをする人もいる。赤く色づいたイチゴを見つけて、思わずほおばる人も……。それを見たみんなの顔が一斉にほころんだ。
施設長の兼城貴子さんはこう話す。「ここの魅力は自然がいっぱいあること。敷地内をぐるっと歩いて回るだけでも気持ちがいいのですが、少し足を延ばして川沿いの土手をお散歩することもあります。桜の季節はとてもきれいですよ。自然と触れ合いながら、ごく自然な日常生活を送っていただくことが私たちのめざしている介護です」
“ひと仕事”を終えた利用者を、スタッフがブドウ棚のガーデンテーブルへと誘った。「みなさんお疲れさま! 冷えたコーヒーを用意してありますから、休憩してくださいね」。木陰で涼みながら、コーヒーでくつろぐ利用者たち。すると、急に風が吹いてきて、ある利用者の麦わら帽子が飛んでいった。それを見て、またみんながドッと笑う。
「コロナの感染拡大で、ご利用者は長らくご家族に会えていませんから、相当ストレスがたまっています。スタッフも、利用者が一番楽しみにしている面会の時間を提供できないことでつらい思いをしています。そんなときに“自粛、自粛”で室内にこもりっぱなしでは気が滅入ってしまいますが、ここは豊かな自然に恵まれていて、気晴らしに土いじりやお散歩ができる。大変な時期ですが、自然の力によって救われていると感じています」と語る兼城さん。
面会を制限するようになってから、SNSに利用者の日々の様子を頻繁に投稿するようになった。投稿を見た家族が“いいね”を押したり、「安心しました」とメッセージを返してくれたりする。なかなか会えない中で、家族同士のつながりを感じてもらうために何をしたらいいのかを、常に模索している。
食べて、飲んで、歩いて…
普通に暮らしながら自立をめざす
午前11時。館内に『365歩のマーチ』が流れると、自力歩行できる人はもちろん、車いすの人も一斉に廊下を“歩き”始めた。「さくらの杜」恒例の、「さくらマーチ」の時間だ。余裕のある利用者は、仲間の車いすを押しながら歩く。足で床を蹴り、自力で車いすをこぎながら、意気揚々と“歩く”利用者も…。
「要介護者に自立支援をさせるのは大変なことと思われがちですが、利用者に無理強いは一切しません。水分や食事をしっかり摂る、そして『さくらマーチ』やお散歩で歩く。こうした活動が自然排便につながると考えています。自然な生活リズムを通して、自然にトイレに行けるようになることをめざしているのです」
1日1,500mlの水分摂取、「さくらマーチ」による歩行訓練、1日2回のラジオ体操などは、すべての「さくらの杜」で取り組む“日課”だ。このほか、2時間ごとの居室の換気やスタッフの検温や手洗いといった感染対策も、グループ全体でルール化されている。なぜ“日課”やルールにしているのか。
介護職が不足するなか、「さくらの杜」でも、未経験者や異業種からの転職者、外国人実習生など、幅広く人材を集めている。兼城さんは「どんなバックグラウンドの人が入職しても、戸惑うことなく一定レベルの介護ができるような仕組みが必要です。そのためには要所要所をルール化しておくことが有効なのです」と強調する。経験値に頼らない介護は、サービスの質のばらつきをなくすだけでなく、どんなスタッフも安心して働ける環境づくりにつながり、気持ちにゆとりも生まれる。
「手が空いたときに利用者に声をかけてお散歩に連れ出したり、仲間のスタッフの様子を気にとめて手助けに入ったり……。気持ちに余裕があると、相手を思いやる心も自然と生まれてきます」と、副施設長の棚澤仁さんは話す。
スタッフから利用者に対してだけでなく、利用者同士、スタッフ同士の間にも“思いやりの輪”が広がっている。自然に包まれてゆったりと過ごせる時間、そして、安心して介護を提供し、安心して介護を受けられる環境が心にゆとりをもたらし、人を優しくしてくれるのだろう。
社会福祉法人 桐和会
特別養護老人ホーム 三郷さくらの杜
●埼玉県三郷市栄4-381
048-951-5846
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2017年4月オープン。全室個室のユニットケア(140床)で、一人ひとりの個性を尊重した個別ケアを行っている。「おむつゼロ」をめざす自立支援ケアにも積極的に取り組んでおり、達成率をHPで公表。
グループ内の認知症専門病院「川口さくら病院」による医療サポートも充実している。2019年には美しい景観づくりに貢献した建築に贈られる「三郷市景観賞」を受賞。